環境問題論で紹介した主なキーワード

以下のキーワードを選び(複数選択もOK)、それについて記述する。
アピールしたい自分の関心事がまとまっていれば、それをレポートとして提出しても良い。

都市のアメニティ(快適さ)

都市には、そこで人が落ち着いた時間を過ごせる快適性、包容力をもつことが求められる。これは自然界は本来的にもっているが、人工的に作られる都市空間でも、自然界とは違ったアプローチでそのような空間作りを行うための具体的な手法が求められている。
レポートの例としては、アメニティを感じられる場所、空間を探し出し、その空間を取材して、なぜ快適なのか、落ち着いた時間が過ごせるのか、を自分が撮影した写真やスケッチを使って記述する。

「ひと涼みスポット」を探す

「ひと涼みスポット」とは、都心部などで、猛暑時にそこで少しの時間でも涼める場所。都市のアメニティをより絞り込んだテーマで、来年開催される東京オリンピックのための「暑さ対策」として求められている。公園、美術館やカフェといった、より長い時間を過ごせる場所は「クールシェアスポット」である。
レポートとしては、身近な「ひと涼みスポット」を探して、なぜその場所が良いか、写真やスケッチを使って記述する。あるいはクールシェア事務局(堀内チーム)で制作したShare Map で既登録のスポットを探し、その場所を観察して評価することでもよい。7月15日のフィールドワークに参加した人は、その結果をまとめて提出してもよい。

ランクロ『地球の色』:自然界にある色彩からの展開

ジャン・フィリップ・ランクロ (Lenclos)は環境の色彩学というジャンルを確立した。環境から色をサンプリング(抽出)することで、作品やデザインとして展開する、という手法を開発した。持ち帰った一つの石を撮影し、そこに現れるさまざまな色をサンプリングすることで、建築やインテリアなどの色彩を決める手がかりとした。この手法を使えば、自然=地球がカラーパレットを作るので、そこには自然の調和が見られる。
レポートとして、身近な環境の色彩をサンプリングし、カラーパレットを作る。あるいは、それを使った作品を作ってもOK。

谷崎潤一郎『陰影礼賛』

日本建築の空間の美学を描写した短編小説。
レポートとしては、この本を読み、現代の空間と比べて考察する、といった展開がある。

考現学

考古学をもじって今和次郎が提唱したもの。彼が生きた時代のさまざまな事象を観察し、スケッチとして残した。限界芸術とほぼ同一の対象で、日常生活を観察することで見えてくる真実、芸術性に注目。人の動作の基本から学ぶ「人間工学」の原点もここにある。
現在の身近なものを観察・記録することで、レポートとして提出するのもOK。

限界芸術

鶴見俊輔による定義。大衆芸術、純粋芸術と対比される「限界芸術」は、芸術の最も古い形式で、生活に深く関わるもの。人の営みそのものが芸術を生み出す。多くの現代芸術がこの前提に立つ。
レポートとしては、自分が目指す作品制作や取り組みが、限界芸術、大衆芸術、純粋芸術のどのあたりを目指しているのかを考察して述べる。

パッシブ(受け身の)デザイン、パッシブソーラー

太陽電池などの工業製品を使うアクティブソーラーと違い、太陽の光を直接エネルギーとして使うアイデアをパッシブソーラーと言う。他にも、自然の風を取り入れるデザインや、地熱(冷たい地下水の活用も含む)を利用したデザインがある。
レポートとしては、既存の事例があればその取材をする。あるいは独自の提案を行う。

単一性と多様性

19世紀の「産業革命」と共に拡がった「近代合理主義」は、大量生産による「単一性」の美学をアピールした。農業では単一作物の大量生産、世界共通の建築様式など、あらゆる分野に広がるが、その合理性によって失われたのが「多様性」である。自然界は「多様性」を基本とした、それぞれが依存し合う「エコシステム」で成立している。本来の「文化」には個人の関与、創造性を基本とする「多様性」がある。近代合理主義の反省として、このような「多様性」の美学、その社会性を活かそうというのが今求められている。
レポートとしては、単一性を表す事例と、多様性を表す事例を取りあげ、その比較を行い論じる、という展開がある。

キーワードからの展開

授業で紹介した以下のキーワードを使って、考察を行う、あるいはその手法を使った作品を作る。

見立て

日本の最も古いデザインの手法で、世界的にもユニークなアプローチ。現代芸術に影響を与えている。夫婦岩:その場にあるものを見立てる。龍安寺の石庭:運んできた石を見立てて、ひとつの世界を創造する。

石組み

造園の基本である、三石組み。合端の思想:石を配置するときに、隣との関係を重視する。

天地人

生け花をはじめとする、多くの日本的な構成原理の基本である。

雁行型

雁が飛ぶ様子からの名づけられた、桂離宮や二条城に見られる、日本建築の平面形式。増築の結果であるが、左右対称を基本とする西洋や中国の建築とは違った美学を生み出した。

真・行・草

石組みに端的に表される。真はきっちりと組まれた石組み、行は中間の石組み、草は自然を模したランダムな集合。桂離宮の石組みの例:全体の概観は真、内部に行と草を含む、といった展開。

以上、レポートを書くためのヒント集です。