授業のねらい

環境問題論 2020(前期)のねらい

環境デザインの基本のひとつは、環境を構成している要素間の良い「関係性」を見つけることです。これはインテリア、建築、ランドスケープの全てに共通しますが、環境問題を解決するための鍵もここにあると考えています。

そこで、この授業では「関係性のデザイン」について学び、自分のデザインに活かすための具体を体験的に学習します。
まず、特定の環境にはどのような要素があって、それぞれが全体の中でどのような役割を演じているのか、関係性をじっくりと辿ってみましょう。いろいろと新しい発見があるはずです。

授業の後半で「環境問題」について学びます。公害から始まり、地球温暖化、ヒートアイランド現象といった、産業化、商業資本主義化の結果として生じたと考えられる、気候変動の問題があります。これは貧富の格差、心の問題なども切り離せないので、SDGsとして、新しい社会の枠組みの定義がされました。アーティストやデザイナーが取り組むべき役割について事例から学び、新しい展開を皆で考えましょう。

※ 以上が昨年までの授業ですが、今年は「新型コロナウイルス」の問題を扱わないわけにはいきません。緊急事態宣言終了の後は「新しい生活様式」への対応が求められていますが、それは環境デザインとして取り組むべき課題だと考えています。まずは身近な課題について検討し、具体を提案したいと思います。

「環境問題論」といっても、世の中に多い評論家的な議論はしません。
授業で提示される多くの事例から、アーティスト・デザイナーが取り組むべきテーマについて実践的に学びます。
このテーマを意識することで、これから進むそれぞれの専門領域において活かせる技術の研鑽につながることを目標にできればと思います。

環境共生論 2020(後期)のねらい

この授業で取り扱うテーマはSDGsという、大きな枠組みにおける環境問題の理解と、それに対する実践の道筋です。授業ではさまざまな事例を紹介し、アーティスト・デザイナーとしてどのように取り組むことができるかを考える機会とします。

コロナウイルス問題が契機となり、「新たな生活様式」としてこれまでの社会的営みを見直し、変更をすることが求められています。長い人類の歴史で、疫病は何度も繰り返されており、14世紀に欧州で流行したペストでは、3割の人が死に、壊滅した都市もありました。今のコロナウイルスはその再来で、人類に対する地球からの警告かもしれません。SDGsは、まさにこのような状況に重要性が増すであろう枠組みです。

環境デザイン領域では関係する主体が多いので、必要なキャスト(役割を担う人)やリソース(資金やモノ)を集め、実現するための流れを作ることも重要です。この授業では、さまざまな取り組みのプロセスを紹介することで、実践につなげるための方法論と技術を身につけることを目標とします。

デザイナーの最初の仕事は、目標のイメージ、ストーリーを作り、提示することで、それが良いプレゼンテーションで共感を得られれば、次のステップに進むことになります。特に環境デザイン領域では、相手(人・環境)があってのデザインであり、絵画等に比べると作品の自由度が限定されます。敷地条件、クライアント等のさまざまな要素を調べ、そのニーズをくみ取って「新しい仕事を生み出す」ということを、授業で体験的に学びます。

また、多くの人と主体の参加を促す「場」における「合意形成」というプロセス、手法も重要です。
この授業ではワークショップの進行方法などの、コミュニケーションのための技術も学ぶ機会となります。この授業では自分で想定したテーマについて、アイデアだけでなく、その展開の方法も含めて考え、提案(プレゼンテーション)まで行うことで、必要な技術を身につけます。特に「自分が得意な役割」について知ることを目指しましょう。

例年はテーブルを囲んだ対面のワークショップで展開しますが、今年は同じことをオンラインで展開するという試みにチャレンジしたいと思います。